多胎妊娠について

昨日「ハイリスク妊娠を経験した」と書きましたが、多胎妊娠(ふたごやみつごの妊娠)がどうしてハイリスクなのかピンと来ない方もいるかもしれません。私も自分が多胎妊娠するまでは「双子って可愛くていいなぁ」とか「一度に二人生まれるから比較的楽そう」とか思っていましたが、実際はとんでもありませんでした。個人的な感想になりますが、記していきます。

(1)悪阻のきつさが尋常じゃありませんでした。二倍どころじゃない。私はそれまで悪阻で仕事に差し支えたことがなかったのに、起き上がれないくらいきつくて、日常生活もままならなくなりました。安定期もないので、ずっと不安を抱えていました。

(2)妊婦健診が負担でした。まず多胎妊娠を管理できる高次病院に行かなければいけないから待ち時間が長いし、特殊外来でスケジュールが管理されるし、頻度が高いです。そして毎回長い時間をかけてエコーして(二人分だからね)、ハイリスクな説明を受けます。それまで妊婦健診は「我が子の成長を観察する楽しいもの」でしたが、多胎妊娠のそれは苦行でした。私は妊娠7ヶ月で早産と死産で妊娠が終了しましたが、それが8ヶ月になるまで続くので肉体的にも精神的にも金銭的にもハードです。

(3)管理入院が不安でした。病院にもよりますが、妊娠8ヶ月から何もなくても強制的に管理入院になります。数ヶ月におよぶこともあり、その間、上の子をどうすればいいのか途方に暮れました。私は佐賀市が親身になって動いてくださり、上の子(まだ6ヶ月でした)の預け先を見つけた1週間後に事態が急変して緊急入院になりました。ホッとして気が緩んだのかな…と思えるようなタイミングでした。

私は特に(2)と(3)が強いストレスでした。ここの不安が軽減されれば、多胎妊娠が少しは楽になるかもしれない…と思いました。

そこで産後(2017年4月6日)、双子三つ子子育てサークルの中村由美子氏と佐賀市議会議員のむらおかたかし氏の協力を得て、佐賀市役所に提言しに行きました。

参考までに、その際に使用した資料をここに提示します。話したこともノートに書いていきます。

今日はお時間をつくっていただきありがとうございます。

色々と市の方に提言をさせていただき、その後もやりとりをして考えたのですが、私がお伝えしたいことを二つに集約しました。

目的は安心して双子を産むために、管理入院と妊婦健診に対する不安を軽減できないかと考えています。

まず私の経験についてお話します。

私は現在32歳で、大きな病気はしたことがありません。

夫と子ども2人との4人暮らしで、双方の両親は健在で近郊に住んでいますが、みな就労しているので普段は手伝ってもらっていません。

私は2011年の26歳の時から医師として病院に勤務しています。かなりの激務でしたが、妊娠を機に仕事量の軽減をしてもらったこともあり、第一子、第二子ともに、出産ぎりぎりまで働くことができました。

昨年の5月に出産した後も3か月で復職していましたが、10月に双子を妊娠したことを機に勝手が違ってきました。

つわりがきついとか、第二子に授乳をしながらの妊娠だったとかで体力的にきつい面もありましたが、

正常妊娠の時と比べて倍の頻度で妊婦健診に行かなければいけないことと、管理入院が予定されていたために第二子の預け先を探さなければいけないことが大きな負担でした。

そこで、そもそも妊婦健診の頻度や管理入院の必要性はどのような根拠で決められているのかを自分なりに勉強しました。

参考にしたのは産婦人科診療ガイドライン2014で、全国の産婦人科医が妊娠管理する上で参考にしている資料です。2017年度版が先日17日に出版されたのをまだ確認できていませんが、私が妊娠した時期は2014年度版に沿って管理されていたのでこれを引用します。

これでは特にリスクのない単胎妊婦の定期健診の間隔は、妊娠11週末までに3回程度、12~23週末までは4週ごと、24~35週末までは2週ごと、それ以降に40週末までは1週ごとと定められています。

多胎妊娠の管理で通常に加えて注意しなければいけないのは、33週以降に妊娠高血圧症候群、HELLP症候群、血栓症等のリスクが増加することです。また胎児致死率は37週の分娩が一番低いと言われているので、37週頃の分娩を目標に管理されます。

リスクが高い時期を入院してしっかり安全に管理するのが「管理入院」ですが、これは開始時期が人によって違います。リスクが高まったと判断されれば20週頃から分娩まで入院する場合もあります。

妊娠経過を簡単に図でまとめました。

通常分娩でガイドライン通りに妊婦健診を実施すると16回になりますが、妊娠に気付いた時点からの受診なので、36~40週の正期産の場合でも妊婦健診クーポンが余る場合もあります。

しかし多胎妊娠は妊娠早期に膜性診断といって、膜の数と胎盤の数をエコーで調べ、多胎の状態をよりくわしく調べる必要があります。そのためクーポンをもらう前から頻回の受診が必要になり、ハイリスク妊娠管理のため近所の産院から遠方の高次病院に通う場合があります。また「通常の倍」と言っても、もっと頻度が上がることもあり、クーポンが減る速度にドキドキしながら受診している妊婦が多いのではないかと思います。

私が感じた妊婦健診における不安についてまとめました。

こんなに高頻度でクーポンは足りるのか?経済的に不安。(診察料、交通費など)

頻繁に受診が必要で仕事の継続が困難。(就業日を何度も変更した)

特に手術が必要かもしれないと福岡の病院に通院していた時期は、運転も難しかったので、夫も毎回仕事を休んで受診していました。

子連れでの受診の負担。(待ち時間、診察中の子守など)

また管理入院における不安についてまとめました。

いつから入院が必要か見通しが立たない。

上の子を預ける保育園探しに奔走。(入院しないと保育の必要性が生まれない、認可外保育所の情報不足)

自分が入院中の家が心配。(夫やその他の家族にかかる負担が激増)

入院費はいくらになるのか、経済的な不安。

遠方の病院の場合は孤独感で精神的に不安定に。

私は結局18週から入院したので、すべてがバタバタと過ぎていき、準備不足のまま入院に突入しました。

自分自身も家族も非常に疲弊してしまいました。

以上を踏まえて、安心して双子を出産するために二つの提言を行います。

妊婦健診における経済的な援助が欲しい。(クーポンの追加、領収書提示で一部返金など)

管理入院中の上の子の保育園の緊急枠が欲しい。(いつから入院かわからない、預けられるかどうかわからなくて精神的に不安)

以上についてご検討いただければ幸いです。

この2枚は参考までに提示しました。

その場で市役所の方が答えてくれたことを記憶を頼りに記すと

「緊急入園枠は以前から検討しているが、そこを作成するとほかの人が使えない。佐賀市も待機児童を抱えている状態なので『緊急入園枠を確保する必要があるので、今すぐ預けたい人を断る』というのも現実的には難しい。ただ多胎妊娠がどのような経過をたどるのかを現場の職員が勉強する必要はあるし、不安を抱えたお母さんにはプライバシーに配慮しながら対応していきたい」というようなことを話してくれました。

その後も、多胎育児支援のイベントで行政の方とお会いしたり、佐賀県が「多胎育児支援をしたい」と表明するなどの動きもあるため、引き続き働きかけていく必要があるなと感じています。

ここまで読んでいて「といってもマリステルって、多胎育児じゃないじゃん?どうしてそこまで首突っ込むの?」と感じる方もいるかもしれません。ただ私が多胎妊娠して多胎育児中のママ達と関わった時に「こんなに大変な世界があるなんて知らなかった」と驚愕したのです。そして今まさに育児に奮闘しているママ達で声を上げる気力が残っている人はそんなにいないのかな…と思いました。だから「お節介」とか「出しゃばり」と批判されても、私は発信し続けようと思っているのです。

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