チーム医療は家族も一緒に

新型コロナウイルス
うちの箱入り娘です

研修医の頃、患者さんのご家族に言われて驚いたことがある。

「寝たきりの人が歩いて帰れるようになる夢のような病院があると聞いた。そこに転院させてくれないか。」

「へー!そんな病院があるのですか?」と詳細を尋ねたところ、なんと私の実家の病院だった。

私の顔色が変わったのに気付いたご家族が「先生の名字って、あの病院の理事長と同じですよね?何か関係あります?」と鋭く突っ込まれ「えっと…父に相談してみます…」と実家に紹介したことがある。そして本当に寝たきりの患者さんが、歩いて家に帰っていく様子を見ることができた。

ふと、そんなことを思い出したのは、ある患者さんのご家族と話したからだ。

「ここに来たら歩けるようになれますよね?大病院で『もう退院していい』と言われても不安で不安で…必死に転院をお願いしたのです」と言われ

「ご期待に添えるように我々も努力しますが、ご本人もご家族も頑張ってくださいね。うちのリハビリは厳しいですよ。」と発破をかけた。回復期リハビリテーション病院に入院したら自動的に歩けるようになる魔法はない。あらゆる方面からの努力が必要になる。

ところで「急性期とか回復期とかって何?」と聞かれることがあるのでざっくり簡単に説明すると、病気の発症直後が急性期で、そこで病気の状態が安定したら回復期になり、その後に維持期や生活期と呼ばれる時期になる。

https://kaifukuki.doctorsfile.jp/rehabilitation/

病気で体調が激変する急性期に比べて、ある程度安定している回復期は攻めのリハビリをすることができる。ここでいかに身体能力を伸ばすかが、今後の人生を大きく左右するので真剣勝負だ。しかも回復期として認められる期間には制限があるので、いかに短期間に効率よく身体能力を伸ばすかに命をかける。

最近、転院してくる患者さんとご家族に、ある傾向があるような気がする。以前に比べて、ご家族が患者さんの病態を正確に把握できていない。「今○○はできて、○○はできません」というような説明をしても、ピンときていないようだ。そしてその原因の一つに「コロナ禍における面会制限」があるような気がしてならない。なにしろ、救急車で運ばれて、うちに転院するまで、一度も患者さんと家族が会っていないのだ。急性期病院の医師やスタッフも、知りうる限りの情報提供の努力はしているのだと思うが、百聞は一見にしかず…というか、やはりピンとこないのは仕方ないように思う。

私は今まで「入院中の患者さんが寂しくないように」とか「ストレスの軽減に」とかいう理由で面会再開を強力に推し進めてきた。

だが実際に再開してみると、入院中の面会により「家族が患者さんの病態を感覚的に理解する」ことに大きく寄与していたことを痛感している。面会再開後、患者さんの家族に「話が通じるようになった」と感じる場面が増えた。

ところで「面会を再開したいけれど、色々不安だ」と考えている病院関係者のために、うちでの面会方法をご紹介したいと思う。面会再開にあたり、このようなルールを設けている。

まず、面会できるのは家族1名のみ、病院の所在地近郊に在住の方に限定している。面会者は全員受付簿を記載するので、万が一感染者が出た…などの事態には追跡できるようにしている。そして、面会者が殺到して病棟が密になるのを防ぐため、病棟に入れる面会者の数を許可証により管理している。この運用で一ヶ月実施しているが、今のところ大きな問題は起こっていない。

この面会再開により「感染予防策を緩めたと批判が来るのではないか」との慎重な意見が多く、私もこの一ヶ月は胃がキリキリしていたが、それ以上のメリットがあったと自信を深めている。

そして、何よりも面会を再開したいと思った理由の一つに「面白いから、ぜひ見に来て!!」という気持ちがある。寝たきりの人が歩けるようになる魔法は一瞬では起こらない。「へー!こういう風に人って回復していくのか!」と言うダイナミックな動きは、とても面白いのである。でもそれには、本当に厳しいリハビリを課しているので、患者さん本人も心が折れそうになっていることも多い。そこで家族に「すごい!頑張っているね!」と褒められると、患者さんのヤル気がみなぎってくるのが、傍目にもわかる。

実は私自身も患者家族になったことがある。三女のリハビリの様子をずっと見守るのは大変だったけれど、面白く、感動した。

チーム医療は医師やコメディカルだけでは成り立たない。患者さん本人や家族も含めてチームなのだと思う。

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