子宮頸がんはHPVワクチンで予防できる

HPV(子宮頸がん)ワクチン

「ろんだん佐賀で書いてみませんか」と最初にお話を頂いたときから、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)について書こうと決めていた。今までもHPVワクチンについてはブログでも何度も取り上げたし、新聞にも2回投稿したが、今年4月にようやく「積極的接種勧奨の一時差し控え」をようやく終了することも決まったので、これを機に盛り上げたいなと思っていたのだ。

HPV(子宮頸がん)ワクチン
「HPV(子宮頸がん)ワクチン」の記事一覧です。

4月の掲載に向けて執筆に燃えている最中に患者さんが「先日の先生の記事読みましたよ。冒頭の『私の力では無い。薬の力だ』以降は難しくてよくわかりませんでした」と言われて「私の文章ってわかりにくいの?」と悩み、できるだけ基本的な知識を盛り込んで、できる限り専門用語を使わないように気をつけて書きました。

子宮頸がん  HPVワクチンで予防できる

私の妹はワクチン接種前に麻疹に罹患したことがある。幼少期に熱性痙攣を発症し、その後一年間(現在は最長3ヶ月までに短縮)はワクチン接種を控える必要があったため、接種機会を逃したのだ。40℃にも及ぶ高熱に何日間も苦しみ、妹が泣きながら「私、もう死ぬの?」と言った時は胸が張り裂けそうだった。しかしそんな妹のそばにずっといた私には何の症状も出なかった。これがワクチンの力なのかと、子どもながらに強烈な経験だった。

ワクチンが開発されている病気は、発病してしまえば根本的な治療法が無かったり、重篤な後遺症を残したりするものばかりだ。恐ろしい病原体に対して我々は無力だ。発病する前にワクチンで免疫力を強化して、何とか自分の身を守らなければいけない。

とは言え、日常生活の中でワクチンの意義を実感するのはなかなか難しい。ワクチンには感染を予防する効果と重症化を予防する効果があるが、その効果が発揮されても見た目には何も起こらないからだ。むしろ副反応の熱や痛みや倦怠感などが目立ってしまうかもしれない。

4月1日から国はHPVワクチン(いわゆる子宮頸がんワクチン)の積極的接種勧奨を再開し「これからはHPVワクチンをどんどん打ちましょう」と決定した。接種機会を逃した人へのキャッチアップ接種も開始し、自費で接種した人への償還も検討され始めている。

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性交渉によってうつるウイルスで、性器やその周辺に感染する。性交渉の経験のある女性の約8割が生涯で一度は感染すると言われており、男女ともに誰でも感染するリスクのあるウイルスである。子宮頸がんの95%以上がHPVウイルスの感染が原因でおこる。そのため性交渉を経験する前にワクチンを接種するのががん予防に最も効果的で、17歳以下で接種することにより発症リスクは約1/10にまで下がる。

ワクチンが普及して子宮頸がんが撲滅した国もあるが、日本ではほとんど浸透していない。定期接種開始直後にワクチン接種後に異常な症状が出たという訴えを受けて国が一時的に接種を勧めなくなったためだ。後に症状とワクチンの因果関係を科学的・疫学的に示した報告がないこと、疫学調査で「ワクチンを接種した人の方が症状を起こしにくい」ことがわかったが、ほとんど報道されていない。

いまだに「HPVワクチンは怖い」というイメージがあるのは、国が一時的と言いながら8年10ヶ月も再開しなかったことと、正確な報道をしてこなかったマスコミに大きな責任があると思う。もちろん我々医療従事者の啓発する努力も足りなかったのだろう。

奇しくも昨日4月9日は子宮頸がんを予防する日である。毎年約1万人がHPVに感染し、年間2800人が亡くなっている現実が、私はものすごく悔しい。子宮頸がんを予防するワクチンがあるのに「知らなかった」という理由で死なないで欲しい。定期接種の対象年齢は小学6年生から高校1年生までの女子で、キャッチアップ接種は平成9年度から平成17年度生まれの方が対象だ。ご自身や大切な人を守るために、正確な情報を知って欲しい。

最後に「4月9日は子宮頸がん予防の日」と紹介しましたが、それに合わせて広告を出すなどの活動をされている方もいます。私も微力ながら普及に貢献できたら良いなと思っています。

きょうは「子宮の日」原宿や渋谷の駅に「子宮けいがんワクチン啓発ポスター」|日テレNEWS NNN
4月9日は「子宮の日」、子宮けいがんのワクチンを知ってもらおうと東京都内の駅にポスターが貼られました。

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