昨年一年間、佐賀新聞で『ろんだん佐賀』を担当させていただき、かれこれ9回寄稿しました。
私は今まで新聞に記事を載せる時は『読者の声コーナー』のページにせっせと投稿して、採用されては小躍りしました。いつ掲載されるかもわからないので、投稿を送ってからは毎日皿のような目で新聞を眺めていました。
そんな日々からすると、自分が連載の担当者になれるというのは「いつ載るか」がわかるし、読者の声のコーナーよりも、はるかに多い字数が書けるので、大変でしたが楽しい経験でした。
ところでこの『ろんだん佐賀』に私を推薦してくださったのは、尊敬する大先輩の医師でした。そのため、最初は気負って「医学ネタをわかりやすく発信しなくては…」と気合が入っていたのですか、読んでくださった方から「難し過ぎて頭に入らない」と言われることが続き「もう好きなこと書いちゃおうかな」という感じで思いつくままに書いていき、最終回はウンコで締めました。
「さようなら佐賀新聞!最後はカッコつける必要もないし、ウンコの話して消えるわ!」と集大成のつもりで書いたのでした。
がしかし、ウンコの記事を気に入ってくださった方が、今度は『診察室から』というコーナーの執筆者に推薦してくださり、またご縁あって佐賀新聞に寄稿するチャンスをいただきました。思わず「私で良いのでしょうか。もうウンコはネタ切れですが…」と恐縮したのですが「ウンコに限らず何を書いても良い」と言っていただいたのでお受けしました。
さて、何を書こう…。私はまず叩き台を書いて母に見せたら「なんかこれ、診察室からってコーナーには相応しくないかも」と言われて再考を余儀なくされました。その頃、私にとって強烈な患者さんとの出会いがありました。そして退院後もマメに連絡をくださるので「記事のネタにしても良いでしょうか」とご相談したところ快諾していただきましたので、取り上げさせていただきました。それがこちら『肥満と向き合うリハビリ』です。
「腰が痛くて動けません」と彼は言った。「だろうねぇ…」と私は思った。男性を妊婦に喩えるなど不謹慎だが、彼のお腹は臨月の妊婦のように膨らんでいた。身長170cm、体重102kg。腰部レントゲン写真で軽度の腰椎圧迫骨折を認め、入院してリハビリする方針とした。
最初はリハビリも「キツイから」と拒否された。当院はリハビリ専門病院である。リハビリしてもらえないなら入院する意味がない。
私は覚悟を決めて説明した。「痛みの原因は骨折だけじゃない、肥満だと思います。お腹が張り出していて、バランスをとるために腰に負担がかかっています。痩せなきゃ治りませんねぇ…」と言うと「そうですか…」と呟いた。
毎日7杯は飲んでいたというハイボールはお預け、間食禁止、病院食だけで彼は耐えた。毎日体重を測定し「キリ良く95kgになったら退院しましょうか」と声をかけた。初めは簡単に3kg減った、99kg。しかしそこからがなかなか減らない…「お腹が薄くなってきた!」私もスタッフも毎日褒めて励ました。
リハビリを拒否せず取り組むようになり、いつの間にか痛み止めは要らなくなった。顔が一回り小さくなり、姿勢も良くなった。入院当初は「早く家に帰りたい」と言っていたのに「楽しい!帰るのが寂しいな」と笑ってくれるようになった。
ついに一ヶ月後、体重は94.5kgまで減った!7.5kgの脂肪を産み落として、彼は退院した。退院後にかかりつけ医から「血圧まで安定している!」と驚かれたそうだ。
私自身も小太りで、無理なダイエットで風邪を引きやすくなったことがあり、「モデル体型を目指して痩せよう!」とは言わない(言えない)。ただ、やはり肥満は体の負担になる。腰や膝への負荷はもちろん、血圧などへも影響する。自分にとって健康的な体重を維持できるように、彼を見習って努力しようと思う。
退院後、心配していたリバウンドはほとんどありませんでした。血圧も落ち着いています。
模範的な頑張りに感動し「常時妊婦」と呼ばれる自分の腹を見て危機感を抱くのでした…
長男妊娠中
ちなみに、母にボツられたネタも、形を変えてそのうち使う予定です(^^)
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