今回の「診察室から」は私の専門分野であるリハビリについて。それも、佐賀リハビリテーション病院を退院後、生活期リハビリへの展望について書きました。
リハビリによる「現状維持への挑戦」
リハビリの目標が「現状維持」と言ったら消極的な印象を受けるかもしれないが、現状維持への挑戦は脈々と続いている。
2024年7月6日の佐賀新聞より
脳卒中や骨折などの急性期治療を終えて、家に戻る(生活期)までの間を回復期と呼ぶ。回復期とはその名の通り、回復能力が最も高い時期だ。回復期リハビリにより、劇的に改善した姿に感動する一方で「これを退院後にどうやって維持させようか…」という挑戦が始まる。
私が働く佐賀リハビリテーション病院は、約65年前に祖父母が佐賀初のリハビリ専門病院を開業し、両親が引き継いで今に至るが、試行錯誤の連続だった。
退院時は歩いて帰ったのに、しばらく経つと家で寝たきりに戻ってしまう。患者の家までスタッフが様子を見に行き、「リハビリをしよう」と誘って患者を集めて外来でリハビリを始めた。家族が送迎できなかったり、言語障害でタクシー利用が困難な場合などは病院車で送迎もした。リハビリを継続することで機能維持ができて大変好評だったが、当時は「患者を囲い込んでいる」と批判されて中止に追い込まれた。だが、患者達からのニーズは非常に大きかった。
現在は介護保険制度が整備されて介護保険を使った通所リハビリは送迎可能だが、医療保険での外来リハビリは送迎不可なのは格差であり課題だ。このような法制度を決める方は回復期リハビリの現状を想像できないのかもしれない。
私は介護保険についても不満がある。現在の制度では定期的に介護度の見直しを行うが、介護度が軽くなると、それまでと同じサービス内容では自己負担額が増えるために継続困難になる場合がある。通所リハビリなどの定期的な利用で保たれていた機能が、介護度が軽くなることで低下してしまう。
現在の介護サービスが有限な資源であり、このような仕組みは仕方ないと思う反面「一度回復した機能は放っておいても維持できるわけではないのに…」と思うと悔しい。
回復期リハビリでピークを迎えた身体能力を維持するための挑戦は、積極的かつ継続可能である必要がある。我々の挑戦はこれからも続く。
最近自分も加齢の影響を感じ始め「若い頃にはヒョイとできたことが、つらいなぁ」と思うことが増えました。現状維持ってなんか消極的な目標のような響きがあるけど、現状維持は進化です!!
ところで病院のホームページのために撮影したこの写真ですが…一人の患者さんの能力を維持するために正に多職種連携であることが感じられると思います。
この写真の中には、患者さんと医師の他に、看護師、看護助手、栄養士、医療相談員が写っています。他にも実際の医療現場では、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、放射線技師、事務スタッフ、清掃スタッフなど、数えきれないくらいの人々が関わっていきます。退院後には、さらにケアマネージャーなども加わり、機能維持に努めます。一人の力では難しく、三日坊主でもいけないし、一朝一夕でもできません。
そして介護保険制度への不満を控え目に綴ったの。だってさ、介護度が軽くなってもメリットほとんど無くない?なんかヤル気無くなるよね…
なんとか有限な介護資源を有効に使いつつ、頑張った人が報われる制度であってほしい!
回復した機能は意地でも維持したい!(シャレじゃ無いよ)
これからも頑張りましょう!!!
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