先日研究会で先輩医師に「この前の佐賀新聞の記事見たよ!退院後の維持って本当に悩むのよ。誰に相談したら良いかわからなくてさ…」と声を掛けられて「わ!ありがとうございます!いくらでも相談お受けします!いつでも声かけてくださいよ!」と話していました。
新聞記事の寄稿って、SNS等と違ってリアルタイムで反響があるわけではないので手探りの孤独感がけっこう辛いのですが、こうやって感想を言って頂けると非常に励みになります。そんなわけで、今回は某芸人のテレビでの発言が炎上した件について取り上げてみました。
炎上事件から考えたこと みんなにとって平和な解決策
「薬剤師が問診するのは全然要らん時間」と断じた某芸人が炎上した。私の夫は薬剤師で「残念だけど、ある意味国民の本音なのかな…」と嘆いた。
2024年9月8日の佐賀新聞より
私は医師なので普段は処方箋を書く側だが、他の医師の処方箋を見ると…これがなかなか難しい。処方箋には薬の名前と量が書かれているが、病名や症状は不明だ。薬剤師は患者に直接薬を渡す役割で、医師に間違いがあった場合に修正できる最後の砦だ。にも関わらず、薬剤師に与えられる情報量は驚くほど少ない。
「タミフル=インフルエンザ」のような一対一対応の薬なら簡単だが、色々な病気に使う薬や、体重・検査結果等で投与量が変わる薬などは判断が困難だ。医師に聞くには疑義照会という書類を作成して確認するため、かなりの時間を要する。必要な情報は患者本人に聞くのが一番手っ取り早いが、非協力的だったり、本人ではなく代理の方が受け取りに来たりすると、確認が困難な場合もある。
また、某芸人の言い分にも共感できる部分はある。体調不良の時に何度も説明するのは大変だし、医師だって診察段階で情報収集に苦慮する場面は多いのだ。皆にとって平和な解決策は無いのだろうか。
処方内容や検査結果、予防接種歴などは、マイナンバーカード(マイナ保険証)を通じて一括管理し、様々な情報を共有できれば、お薬手帳も不要になるだろう。現在は患者さんが個人情報漏洩を心配するあまり、医療機関への情報提供に同意しない方もいるが、重複処方や検査を防ぐためにぜひ同意して欲しい。
また転居や里帰り出産時など、予防接種の公費助成が円滑に受けられない場合もある。予防接種は住民票のある市町村が管理しており、個人では母子手帳で確認するしかない。マイナカードは全国共通なので、接種漏れを防ぐことも可能になるかもしれない。
ちなみに子宮頸がんを防ぐHPVワクチンのキャッチアップ接種(平成9〜19年度生まれの女性)は今年度までで終了する。対象者はお忘れなく。
動画で見ると「これ収録やろ?こんな暴言をそのまま流すってテレビ局のチェック機構機能してないな」と苦々しく思った。
この炎上した発言についてはご当人が既に謝罪されている。謝罪文にアンサングシンデレラが出てきて「あ、私も読んだな」と思った。薬剤師は医療従事者と言えど、私も知らないことがたくさんある。
この当時、夫含め色々な薬剤師友達に「あれどう思う?」と聞いたのだけど、けっこうみんな冷静に受け止めている印象だった。実際同様のことを患者さんから言われたことがある人もいた。
元々医師が診察して薬を出すときに、医師が儲け主義に走ったりしないように、処方箋を書く医師と薬を調剤する薬剤師という2つの専門家を使って監視しあう(医薬分業)ためのシステムが現在の院外処方だ。私の処方箋に問題があったときなど調剤薬局からお問い合わせがあり「え、重複処方?ごめんなさい!」「一本のつもりだったけど1mlって書いてた?うわ、アホや、ごめん~!」と、私も幾度となくお世話になっている。医師だって人間だから間違いはある。同様に薬剤師だって人間だから間違いはある。お互いに補い合っていけたらなと思う。
濱家さんも言及しているけど「薬剤師の仕事って想像している以上に大変」です。今は薬の流通もイケていないし、今後10月からは「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養」なる新たな料金の徴収も始まるし、超面倒くさそう…
今までに薬剤師についてけっこうブログを書いてきたのでまとめて貼っておきます。いつもお世話になっております!!!
今年の4月に診療報酬が改定され、マイナ保険証を中心とした医療DXの推進が話題になっている。マイナ保険証を提示する際に医療情報の提供に同意してもらえたら、電子カルテシステムと連動させてかなりの情報を取得できるのだが、意外と同意してもらえないケースもある。
実はこの医療情報って、患者さんがマイナ保険証を提示してから24時間しか見られないので、処方内容が見られることに気付いてなかった…。医事課課長に「このマイナ保険証ってさ、処方内容が見られるともっと便利よね?」と言うと「ん?既に見られますよ!」と見方を教えてくれた。医師以外のチェックって大事だなぁ。公開前に滑り込みで原稿修正しました!!
私が夢見る「みんなにとって平和な解決策」にマイナ保険証はかなり寄与すると思うので、ぜひお願いしたい。
ちなみに最後の方で予防接種の接種漏れ問題について書いた。転居や就学・就労等で、住民票のある住所以外での予防接種が困難だったり、接種歴の把握が難しくなる場合はけっこうある。以前、私の職場で県外から通勤している職員に予防接種をしようとした際に、その問題に気付き、その職員の居住地の市長に相談したことがある。ホームページの市長への意見箱で投げかけたのだが「接種後に接種費用を助成しましょう」という英断をしてくださった。大川市の倉重良一市長、あの時はありがとうございました!
そんなこんなで今回も私のカオスな頭の中を書き写したような記事になりました。あ!HPVワクチンのキャッチアップ接種は9月中に開始してね!忘れないでね!!!
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