前回の『診察室から』で息子のメガネ治療について書きました。
それを見た次女が「私のことも書いてよ」と言いました。私は返事に窮してしまいました。
「あなたのことを書くって…円形脱毛症のことを書いて良いの?お友達に聞かれただけでショックで落ち込んでいたのに…?」とためらっていると「良いよ!だってもう生えてきたもん。ハゲって何回も言われると『そうだね~』って最近は軽く流せるようになったし、大丈夫!」と太鼓判を押してくれたのですが、正直言ってなかなか筆が進まなかった。娘を傷つけるのではないかと葛藤したのです。しかしながら、苦戦しながらも、勇気を振り絞って書いたのが今日の記事です。

円形脱毛症 治療を乗り越え、たくましく成長
娘の髪に白い丸が見えた。よく見ると髪が生えていなかった。「10円ハゲ」とも呼ばれる円形脱毛症は、まるで100円玉のように白っぽく光っていた。
円形脱毛症は、成長期毛包組織に対する自己免疫疾患である。遺伝的素因を背景に、疲労やウイルス感染症、ワクチン接種、出産や精神的・身体的なストレスなどの環境因子が引き金と推察されるが、明らかな誘因がないことも多い。ストレスで脱毛するイメージが強いが、ストレスを感じて数ヶ月後に脱毛が起こるなどのタイムラグもあり、原因は特定しにくい。
皮膚科を受診し、ステロイド外用を開始した。産毛のような短い毛が生えてきてホッとしたのも束の間、すぐに別の部位の脱毛が始まった。最初は髪の結び方などを工夫して問題無く学校生活を送っていたが、友達に「どうしたの?ハゲているよ」と声を掛けられて「バレた…」と落ち込んでいた。学校に「身体的特徴を話題にしないで欲しい」と要望を伝えた。純粋に心配してくれていたとしても、話題にされると新たなストレスが生まれる。大学病院を受診して精査したが「生えてきているから心配ない」と言われ、治療には時間がかかると実感した。焦りは禁物だ。
なお円形脱毛症診療ガイドライン2024にはステロイド外用以外にも局所注射や点滴、経口JAK阻害剤などの分子標的治療薬も試みられており、治療の進歩がめざましい。娘は多発性だったが、全頭型(頭全体)や汎発型(全身)などの重症型もある。ストレスが誘因で引き起こされる身体症状は無数にあるが、頭痛や腹痛などと違って、脱毛は目立つので他人に伝わりやすい。
娘は発症から一年が経過し、脱毛部位があまり目立たなくなってきた。まだ全体の長さはバラバラだが、力強く生えてきた毛がいとおしい。辛い思いを抱えた治療を乗り越えて、娘自身もたくましく成長したようだ。
書くにあたって、発症当初の写真を見ていたら、あの葛藤の日々が蘇ってきて泣けました。
最初にみつけた100円玉のような脱毛部位がどんどん広がっていたこと。下を向くと頭頂部が気になって仕方なかったこと。
娘も「うわぁ…」とため息をつきつつ、重症例の写真を見て「まだ私マシな方だったのか」と呟いていました。

「髪の結び方を工夫して」と本文中にサラッと書いたけれど、長女が妹のために髪結いを猛練習して脱毛部位が目立たないように工夫に工夫を重ねていました。まさに姉妹愛。長女はめきめき腕を上げて、今では私より上手に結い上げてくれます。固定スプレー(ケープとか)を多用し過ぎて地肌がかぶれてしまったので、ハードタイプのゼリーに切り替えました。私は編み込んであげることが多かったので、フォームタイプを愛用しています。男の子だとこういうまとめ髪で誤魔化すのは難しいかもしれません…


ようやく最近髪が生えてきて、次女的にも受容段階に入ったようでとても落ち着いてきました。良かったー!!
この記事を円形脱毛症と戦う同志へのエールになれば良いなと願っています!!いつかは生えて気にならなくなる日が来ます!頑張りましょう!!



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