昨年、小児科の待合室で酸素ボンベを積んだベビーカーに乗せたお子さんを連れたお母さんに待合室で話しかけました。「うちの子も在宅酸素療法をやっていたの。荷物が増えて大変よね。」と言うと「そうなんです!あの…何歳の時に外れました?」と前のめりで聞かれて「1歳になってからだったかな…」と話が盛り上がりました。そう、あの頃、周りに在宅酸素療法をやっている人がいなくて、本当に不安だったな…。なかなか情報が無いし…。そんなことを以前の投稿を読んでいて思い出していました。
~~~(2018年2月26日のFacebookの投稿より引用)
彼は私を見て、突然こう言った。
「もう、終わりにしようか。」
「え…?」
彼と出会ったのは昨年の2月2日のこと。
意識朦朧とする中「可愛い女の子ですよ。顔は見えますか?」と話しかけてくれた。
翌日、小さな保育器の中でも埋もれてしまうほど小さな我が子をボーっと見つめていたら、また彼がにこやかに話しかけてきた。
「昨日は大変でしたよ。敗血症になってしまって一時はなかなか血圧が上がらなかったのですが…なんとか持ち直しましたね。お母さん、ドクターだから胸部レントゲン写真、見方わかりますよね?ほらここ、気胸になっていますね。今から胸腔ドレーンを入れたいと思います。」
「そうですか…。こんなに小さくて、人工呼吸器管理中でもありますし、ドレーン挿入も難しいですよね。どうぞよろしくお願いします。」
ドレナージはできたけれど、新たに2つのブラ(肺の中にできる空間)ができてしまい、それが圧迫したために呼吸がなかなか安定しませんでした。人工呼吸器を離脱した後も、なかなか酸素を外せない。同じ時期に入院した子や、それより後に入院した子がどんどん退院する中、私は焦っていきました。生まれてこの方、ずっとNICU(新生児集中治療室)から出ることなく、この子は生きていくのだろうか。太陽の光も浴びず、私以外の家族の声を聞くこともなく、モニター音と医療スタッフの声だけを聞いて、これからも育っていくのだろうか。
「在宅酸素療法を検討しましょうか。」と彼に提案された時は、思わず「やっていく自信がありません。」と言ってしまったけれど…、結局は「酸素を持って帰ります。早く退院したいです。」と頭を下げた。
勢いよく退院したものの、3歳の長女とまだ歩けない1歳の次女(退院当時。今は走り回っていますが。)と常に酸素ボンベを持ち歩かなければいけない三女を抱えた生活は、さすがの私でも最初はひきこもりになりました。
でもすぐに慣れて、酸素ボンベを2人乗りベビーカーのバスケットに乗せて出かけたり、スリングで抱っこして肩に酸素ボンベを引っかけたり、色んな方法で出かけるようになりました。
日中の酸素が外れてからは、旅行先に酸素発生装置を設置してもらって泊りがけで旅行にも行くようになりました。
退院後に胸部レントゲン写真を撮ってビックリ。手術適応とまで言われた肺のブラが消えていました。彼が「退院して良かったですね。お姉ちゃんと遊んでいるうちに無くなっちゃったのかな?本当に良かった!!」と喜んでくれて、思わず私も涙がでました。
そうそう、もういい加減おわかりですよね。
彼とは三女の主治医です。
「終わりにできそうですね、酸素。もう今日からやめましょう!」
「本当に!?やったー!!!!!!!」
「終わりにしよう」と君が言ったから、2月26日は酸素記念日♡
もう海外旅行も行けちゃうわよ~♡♡♡
(※酸素業者の支店が海外にないから「旅行は国内」のルールがあったの)
~~~(引用終わり)
そうそう、もうすぐ酸素記念日です!
在宅酸素療法の導入理由は人それぞれで、三女の場合は呼吸の不安定化の原因になっていたブラが自然に消失したので中止できましたが、同じ病気でも手術が必要になる人もいるし、もっと長い間酸素が必要になる人もいます。酸素以外にも吸引や胃管が必要になる人もいます。それぞれがそれぞれに必要な治療を施されるので「他の人と違う」と比べて落ち込んだり、焦ったりしないようにしましょう。
具体的にイメージできるように、在宅酸素療法を導入する場合の流れについて、三女の事例を元に思い出してみます。
- 退院後も酸素が必要だと主治医が判断し、在宅酸素が処方される。
- 退院日までに酸素業者と面接し、退院前に自宅に酸素発生装置を設置してもらう。携帯用の酸素ボンベとケース、経鼻カニューレ(2mくらいのと10mくらいのを2本。入浴時は長いものを使用)、SpO2モニターとセンサーも一緒に届けられる。
- 退院後も電話や訪問で酸素業者がフォローしてくれる。
- 在宅酸素療法中は少なくとも月に一回は主治医の診察を受ける。画像検査なども適宜行う。
- 酸素の減量や中止なども主治医から指示される。完全に中止になった後も、1ヶ月程度は経過観察した後に酸素業者が装置一式を回収する。
書いてみると結構大変な治療だと思いますが、酸素そのものに対するお金はかかりませんでした。医療の助成があるようです。
身近ではない治療法だから、導入前は怖かったのですが、割とすぐ慣れました。荷物は増えるし、外出先でも火があると怖かったし(爆発したりはしないけど、火には近づけてはいけない)、もし災害があっても酸素ボンベ付きで避難は難しいと思ったから自宅避難できるように頑張って部屋を片付けたりもしていました。
それとかなり心強かったのは酸素業者の方。旅行したいと行ったら、旅行先に酸素発生器を設置してくださって、旅行先の支社と連携してバックアップしてくださいました。また、私が掃除の際に酸素発生装置のコンセントを外したことに気付いていなかったら、遠隔モニターで察知してくれて電話がかかってきたこともありました。ビックリしたけれど見守られている安心感がありました。
そうそう、退院直後はモニター音が鳴るたびにビクビクしていました。
~~~(2017年7月19日のFacebookの投稿より)
やっと寝たと思ったらSpO2モニターのアラームが鳴り響く…なんやねん!!(※在宅酸素療法なので酸素とモニター付き)
確認してみたら、アラーム設定が大人基準になっていました…。大人なら心拍数50未満140以上でアラームが鳴るけど赤子は100未満200以上で十分。SpO2も下がりやすいから85未満で。設定を変えたらやっと静かになりました。
退院した足でかかりつけの小児科に紹介状持参で寄ったら「君は知識があるから冷静だけど、普通のお母さんは不安でおかしくなるような状況だよ?」と言われました。「私も不安ですけど!」と思ったけど、モニターのアラーム設定を躊躇なく変更できるのは、確かに…。今までの環境に感謝したくなりました。
~~~(引用終わり)
ここではサラッと書いているけど、私なりに心配でNICUマニュアルという分厚い教科書を読んで勉強していました。なんか色々と怖かったのです。
でも、もし在宅酸素療法になっても、必要以上にビビらないでくださいね。なんとかなりますから。なんとかなると主治医が判断した人しか、退院にはならないのですから。
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