タバコをやめない理由

医学ネタ

はじめに言っておきますが、私はタバコが大嫌いです。

夫には「私の前でタバコ吸ったら別れるから」と宣言していて(現に前夫は陰で吸っていることがわかって愛が冷めた)、患者さんが喫煙者とわかると目の敵にするくらい嫌いです。煙たいの無理だし、「明らかに健康上に害があるのに吸うってバカじゃないの?」としか思えない。


そんな私の元に、毎月ベビースモーカーの患者さんがやって来ます。彼は毎回タバコをやめない理由を語ります。最初は呆れて「タバコをやめられない、意志の弱い人の言い訳なんて興味が無い」と聞き流していたのですが、ずっと聞いているとだんだん面白くなってきました。

そこで先日「あなたのタバコをやめられない理由をブログで紹介してもいい?」と聞くと「嬉しいです!書いてください!」とアッサリ快諾されました。普段は個人情報が気になって患者さんの話は書きませんが、お許しをいただいたので書かせていただきます。

だからと言って、私は彼がタバコをやめないことを許したわけではありません。医師として禁煙をすすめるのは当然の使命だと思っていますから。でも、私が全く理解できない喫煙者の心理はとても興味深いと思ったのです。


肺年齢93歳なのに生命の危険を感じられない

初めて彼が現れた時、他院からの紹介状を持って来られました。その呼吸機能検査で明らかなCOPD(慢性閉塞性肺疾患)で肺年齢93歳と書いてあって二度見しました。まだ彼は60代なのに。

「あなたの肺だけを見ると平均寿命を既に越えていますね。肺は死んだようなものですよね。タバコはやめた方が良いとは思いませんか?」

「いやぁ…やめられないですね!」

「聞き方を変えます。何が起こったらやめようと思いますか?」

「いよいよ死ぬぞって脅された時かな」

「いや、あの…既に…死ぬレベルやと思いますよ?」

肺年齢93歳、まだまだ生きています…!!


庭で一服が至福のひととき

私は元ヘビースモーカーの方が「娘に臭いと言われて禁煙した」と話していたのを思い出したので、娘を巻き込んで禁煙しようと考えました。

そこで彼の娘に「どう思う?」と聞いたところ「もちろんお父さんの身体のために禁煙して欲しい。でも…お父さんも大変なのに楽しみを奪うのは可哀想」と苦渋の表情で言われました。今まで散々頑張って無理だったものね…お薬もたくさんトライしたのにね…💦

「で、お父さんの楽しみって何?」と聞くと「ひと仕事終えて、ホッと一息庭先でタバコを一服。これのどれが欠けてもいけない!幸せの瞬間ですよ!」と熱弁されましたが、全く理解できませんでした。

「娘巻き込み作戦」は失敗に終わりました。


値上げしても吸うのは本物の愛煙家!?

タバコ増税のニュースが流れた頃、彼は憤慨していました。

「いいことじゃないですか!タバコの値段が倍増すればやめるでしょう?」と、私はニヤニヤしていましたが…

「何を言っているのですか!タバコ歴50年の私に言わせていただけばね、私が吸い始めたころは一箱100円でしたよ。それが今や580円ですよ!6倍ですよ?倍増くらいでやめるわけないでしょうが!」

「ねぇ…あなたまだ60代なのに、タバコ歴50年って盛ってるの?それともフライング?」

「それは今、問題じゃ無い!(←フライングと確信)私に言わせればね、今の高値になっても吸っている人は本物ですよ!本当にタバコが好きなのです!!」

大増税しても吸っているのはホンマモンの愛煙家ですってよ?

そのうちタバコは金持ちの特権になるのか?

タイタニックでローズが吸ってたね

そんなわけで彼は「死ぬまでタバコはやめない」と今日も私に宣言し続け、私はそんな彼を外来で「おお!まだ生きておったか!死んだかと思っていたぞよ」と迎え入れております。。

タイタニックの頃のレオ様は美しい

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