「日本人より日本のことを考えている」と評判のロバート・D・エルドリッヂ博士の講演会に参加しました。知らない人のためにエルドリッヂ研究所の紹介から引用すると「日本の国際的な地位と発言力を高めると共に、制限・制約なしの日米関係の深化(進化)と強化に貢献する調査、研究及び提言。また、アメリカや日米関係、沖縄問題、防災のあり方、そして外国から見た日本や日本を取り巻く国際環境について講演・研修も行う。」というものです。
タイトルは講演会のタイトルを引用しました。サブタイトルの「解決は日本次第」と言う言葉に背筋がぐっと伸びます。つい安全保障の話になると「日本って、戦争しちゃいけないから、実際には動いてはいけないのではないのかしら?」という平和ボケ全開のアメリカへの依存心が顔を出してしまうけれど、そういう非常事態になる前の平時の段階で、日本は完全なる努力不足だということを痛感することになりました。
一緒に行った母と「めちゃくちゃわかりやすかったね!」「今まで誰もどうしてこういうこと教えてくれなかったのかしら?」と盛り上がりました。参加者の中からは「聞きながら一気に体温が上がってきた」といった熱い声が湧いていました。
今回の講演の目的は3つ挙げられました。これらについて、私のメモを元に順番に話をまとめてみます。
- 尖閣諸島や台湾は日本をはじめ、日米同盟、インド太平洋地域にとって最重要
- 尖閣諸島と台湾の安全保障は、緊密に関連している
- 米国に頼ってはダメ。日本が自己努力をしないといけない!
尖閣諸島や台湾は日本をはじめ、日米同盟、インド太平洋地域にとって最重要
台湾は中国に接し、かつ日本にも近いという地理的な理由から非常に重要な場所です。また歴史的にも、台湾の発展に寄与するために、日本から最も優秀な人材を派遣するなど、友好国としての存在感があります。台湾の人の9割は「自分は台湾人だ」と考えており、中国人とは考えていません。
台湾が中国に攻められたら、そのまま一気に日本に攻め込んでくるでしょう。台湾と尖閣諸島は同時並行で攻められ、沖縄県、そして日本が危なくなります。フィリピンも攻められ、米国への信頼度は低下、インド太平洋地域までもが一気に戦闘状態になります。
これらは地理的にも非常に狭い範囲で起こるため、一瞬で陥落する危険性があります。
日本ができることは、アメリカに倣って、日本版台湾関係法を制定すること。そして台湾を国家として承認することです。ただそれはかなり困難なことでしょうから、日米が連携して行う必要があります。
尖閣諸島と台湾の安全保障は、緊密に関連している
尖閣諸島は歴史的に1895年以降、日本の固有領土です。エルドリッヂ博士は元々、尖閣諸島の問題は日本と中国の二国間の問題だと考えていたそうです。しかし、安全保障、資源・経済(EEZ)、外交(秩序)上、非常に重要であることから、日米同盟のテストケースとしてお互いにとって大切だと認識を改めたそうです。
尖閣諸島が非常に危ないとされているのは、すでに中国に占拠されているためです。尖閣に資源があることがわかり、中国は領土・領海・領空の領有権を主張し、領土・領海・領空を侵犯することで既成事実をつくってきました。3K(数・回数・規模)において圧倒的で「日本のせいで事態を面倒にしている」と事実とは異なる主張を世界に向けて吹聴しています。脅迫、尾行し、海上警察法の改正により、周辺海域での武器使用が認められ、中国は実際に尖閣諸島を占拠している状態です。軍事以外にも経済、外交、政治的な圧力を加えています。
尖閣諸島が日本のものなのか、中国のものなのか、国際世論は分かれています。アメリカは中立の立場をとっています。
日本は領土でありながら、中国の占拠を指をくわえて見ているのでしょうか。物理的な空白と、国際世論の空白を、埋める努力をしてこなかったのが日本政府ではないでしょうか。
もし中国に尖閣諸島がとられてしまったらどうなるか、想像してみましょう。
尖閣諸島は中国の軍事基地と化し、米軍が沖縄から撤退します。尖閣諸島と沖縄が距離的に近すぎて、緊張状態を高めてしまうからです。それはつまり、日米同盟の解消を意味します。沖縄は一気に危険にさらされ、日本全体が危なくなります。
日米安保条約どうこう…の難しい話は置いておいて、この国際世論が割れているのは、米国民からしたら非常に不愉快な話ではないでしょうか。米国民は、貴重な米軍を、日本の領土かもわからないような場所を守るために投入することを許してくれるでしょうか。
米国に頼ってはダメ。日本が自己努力をしないといけない!
いま全くもって無策な日本がやるべきことは「尖閣諸島が奪われてから奪還するのではなく、奪われないように努力するべき!」ではないでしょうか。恋愛でもそうじゃないですか。「逃がした魚はデカかった」と後悔するのではなく、逃がさないように努力しなくちゃ。
博士が掲げたのは6つの案です。
- フィリピン、ベトナム地域の諸国との連携
- 「尖閣資料館」を石垣で建設(広報外交)
- 実効支配を見せろ!(気象台、灯台、港やヘリポートの建設・整備、要員常駐)
- 射撃訓練場の使用再開
- (日本領有権を認めた場合)台湾との公式関係強化(国交外交、承認を含む)
- 海上自衛隊を石垣に配備し、できるまでの間、日米やQuadで対応
そして尖閣について台湾との取引を提言したり、日米同盟の展望を話をしたりしました。
最近発表された記事の紹介もありましたが、ものすごく臨場感が溢れていて読み応えがありました。
活字が苦手な方は動画で。今回の講演会の内容は27分くらいから…
「日本人より日本のことを考えている」本当にその通りで、日本にとってこれほど大切な提言を日本のために真剣に考えてくださっていることに胸が熱くなったのでした。
博士は31年前の1990年に来日されましたが、短期滞在の予定が、日本に惚れ込んで永住権を得て今も日本にいてくださっているそうです。沖縄返還の研究をするために「机上で考えるだけではなく実際に住んでみよう」と沖縄にも7年間生活していたとか、米軍をクビになることを覚悟で日本の尖閣諸島領有権主張を支持して研究されていたとか「こんなアメリカ人がいるのか」と感動して泣けてきました。
そして、質疑応答の時間に、普段から考えていたことを率直に聞いてみました。
「尖閣諸島が安全保障の要となることは頭では理解できますが、正直なところ、私は尖閣諸島に愛着が持てません。どんなところだかよくわからないし、たとえ自分が行けなくても、研究者やカメラマンなどが尖閣諸島の様子を伝えてくれたら良いのに…と思います。尖閣諸島に実際に行けないのはどうしてですか。何が障害なのでしょうか。」
これには色々な要因がある…と博士はいくつかの理由を教えてくれました。
- 愛着が持てないことは中国側の策略だ。非常に賢い、ずるいやり方だ。多くの日本人というか世界中の人に「尖閣諸島はただの岩だ、中国が強く主権を主張している。台湾も中国の一部では?」という意識を植え付けている。中国は発信が非常に得意だ。
- 実は、尖閣諸島に立ち入ってはいけないという密約があるのでは…という噂もある。もともと尖閣諸島はアメリカが統治していたが、その後日本になり、その後に尖閣諸島に資源が豊富にあることがわかると、中国と台湾が権利を主張するようになった。アメリカ統治の頃は、日本人はわりと自由に立ち入っていて、大学の調査団とかも来ていた。日本に返還してからは全然行けていない。
- 学者にも責任の一端はあるだろう。日本の主張を支持して発信しているのは私くらいだ。中国の主張を鵜呑みに…というか、中国よりの発信をする学者がほとんどだ。
- 与党の中にも中国に近い議員はいる。特に尖閣諸島に関わるのは国土交通省だが、国土交通大臣はある党がずっと担当している。
最近でも公明党が「人権の党」を掲げながら中国のウイグル人権問題を「根拠が無い」としたことを苦々しく思っていたので「またかよ…」と怒りがこみ上げてきました。
また他の参加者が「佐賀県民としてできることはないか」と問うと「オスプレイ配備を早く認めてあげて」とピンポイントで指摘されました。東日本大震災のとき、被災地へ向かうのに3日かかったが、オスプレイは給油を空中で行える上にスピードが速いので3時間で到達できる。被災地は空港が使えないが、そのような場所へも行くことができる。そのような強力なメリットがある道具を自衛隊に与えないことで一番喜ぶのは誰か、中国である。九州の自衛隊は非常に広い範囲をカバーしなければいけない。自衛隊のためにオスプレイ配備をスムーズに進めさせてあげて欲しい。
今まで騒音問題などばかりが取り上げられて、佐賀県内には「オスプレイ反対」というポスターをよく見かけるのですが、そうか…あれは中国を応援したい人達がやっていたのかとハッとしました。
「会ってみたいな」と思っていたエルドリッヂ博士のお話を生で聞くことができて、私の中でも何かがメラメラと燃え上がってきました。自分の身は自分で守るという自助の精神で、日本のことも日本人が気合い入れて守らないと、ですね。エルドリッヂ博士、講演会にお誘いくださったひらまつ病院の平松理事長、本当にありがとうございました!!
コメント
べりーないすです。
西山先生 ありがとうございます!これからも日本愛を胸にがんばります!