HPVワクチン、まずは1回!

HPV(子宮頸がん)ワクチン

佐賀新聞の「診察室から」のコーナーへの寄稿、前回はダイエットに成功した患者さんの話を書きました。

多くの反響をいただいて「私もダイエット入院したい」と受診してくださった方もいましたが、私はダイエットの専門家ではないので…💦 入院も回復期リハビリの適応がある方しか受け入れられないのです。変な期待を持たせてしまってすみませんでした。


さて、2回目の「診察室より」はHPVワクチンについて書きました。身も蓋もない言い方になりますが「いくらお金や保育園があっても、子宮が無かったら子どもを産むことはできません。」と言うのは、綺麗事ではない本音です。少子化問題の解決において、ここは死守するしかないでしょう!

2023年6月24日の佐賀新聞より

『HPVワクチン、まずは一回!』

夏休みを前にお勧めしたいことがあります。子宮頸がんを防ぐHPVワクチンを接種しませんか。11歳から26歳の女性は、今なら無料(定期接種+キャッチアップ接種)です!

子宮頸がんは20〜30代の女性に多く、ヒトパピローマウイルス(HPV)というありふれたウイルスの感染が原因です。HPVはSEX経験者のほぼ全員に感染しますが、大半は自然に治ります。運悪く感染が持続すると「がん」になることがあります。

がんの治療は大変です。局所治療が難しくなると、子宮を切り取ります(1万件/年)。子宮の周りに広がれば、大腸や膀胱も切り取ります。人工肛門や人工膀胱を抱えた生活は大変で、亡くなる人もいます(3千件/年)。

政府は「異次元の少子化対策」として経済や育児の支援を強化していますが、女性の健康も守って欲しいです。いくらお金や保育園があっても、子宮が無かったら子どもを産むことはできません。

ワクチンが男女ともに広く普及してる国では、子宮頸がん患者はほとんどいません。「男性に子宮頸がんワクチン?」と違和感があるかもしれませんが、HPVは性感染症なので、男女ともにワクチンを接種すれば、より効果的に予防できます。またHPVは男性もかかる病気(中咽頭がん、肛門がん、尖圭コンジローマなど)の原因にもなるので、男性の健康を守ることにも繋がります。

残念ながら、日本はHPVワクチンの接種率がとても低いです。「ワクチンに危険な副反応があるのでは?」という誤解のために、接種率は一時0.3%にまで落ち込みました。昨年から政府が接種を呼びかけるようになって増えましたが、まだ7%です。ワクチン対象者の9割以上は接種できていないのが現状です。

昨年WHOはいままで3回接種していたHPVワクチンを「できるだけ早く1回接種すること」という方針に変えました。日本ではまだ3回のままですが、世界では1回接種でも十分な予防効果があると言われています。

若者は学業や仕事に忙しく、3回接種はハードルが高いです。でも1回くらいなら何とかなりませんか?打たないともったいないです。ぜひHPVワクチンを接種しましょう。

2023年6月24日の佐賀新聞より

この話題は一年前にも「ろんだん佐賀」でも取り上げました。私は産婦人科医でも小児科医でもないけれど、正しい知識をしっかり普及させなければと勝手に使命感を持っています。オピニオン欄への投稿も含めたら、佐賀新聞に載せていただくのは4回目です。新聞で取り上げると反ワクチン団体に攻撃されることがあると聞きますが、それでも載せてくださる勇気に心から感謝しています。


最近のブログでは製薬会社のMRさんとのやり取りも紹介しました。これはMRさんを怒っていたわけではなく(なんかすごく怖い人みたいな書き方になっちゃったけど)「どう伝えればHPVワクチンを皆打ってくれるのかな」「どこが問題なのかな」と考えるきっかけになりました。

このブログにも取り上げたようにワクチンの接種回数が3回から「1回」に変更することは、とてもインパクトがあると思います。ぐっと接種のハードルが下がります。このブログを書いた後に職場に実習にきた学生さんに「1回で良いから打ってみない?」と声をかけて接種しました。忙しい学生さんも1回ならなんとか時間に都合をつけて打てるのでは無いでしょうか?


それに加えて出生率1.26という目を覆いたくなるニュース…

「ろんだん佐賀」でも少子化問題について取り上げた時に調べて危機感を持っていたけど、本当にヤバすぎると思う。日本人はそのうち絶滅危惧種になるでしょうね…


「隗より始めよ」と言うように、この記事を読んだ誰かが打ってくれたら嬉しいです。ワクチン普及の起爆剤は「周りに打ったことがある人がいること」だと思います。コロナワクチンも皆最初は怖かったけど、周りに打ったことがある人が増えたら爆発的な速度で普及したじゃないですか。あんなもんだと思います。

そして私がHPVワクチンを発信するようになって、色々な方が「実は私は子宮頸がんだ」とカミングアウトしてくれるようになりました。私そんなに友達が多い方でもないですけど8人もいました。かなり驚きました。自分が子宮頸がんであることを隠している人ってとても多いです。昔は性に奔放な女性がかかるイメージがあったので、余計に隠すようになったのでしょう。でも、確実にたくさんいることを肌で感じています。

誰でもかかりうる子宮頸がん、でも予防法も明確です。ワクチンをきちんと接種して、それでもリスクはゼロではないから定期的にがん検診を受けましょう。

アイキャッチ画像にお借りしたのは、「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」の広告からです。キャッチアップの対象年齢の方へ向けてのメッセージ溢れるポスターです。

みんパピのポスターって力作揃いで、こういった男女問わずに予防しようと啓発するものや

ドキッとするようなメッセージもあります

日本から子宮頸がんが一刻も早く無くなることを祈ります!!!

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