AIの手も借りたい

診察室から
だって車の運転って楽しいもの!(※私の車ではありません)

今年最後の新聞投稿である『診察室から』。これは医師ならではの視点で書かないといけないから毎度ネタに苦労するのですが、今回は自動車運転禁止について書いてみました。

2023年12月30日の佐賀新聞より

AIと共存を  高齢者の自動車運転

年の瀬に振り返ってみると、今年は特に自動車運転禁止(いわゆるドクターストップ)に苦戦した一年だった。

たとえば高齢者が加害者になる交通事故が報道されるたびに「運転免許証に年齢制限を」「なぜ周りが止めなかった」などの批判が飛び交う。実際に高齢者がいる家庭では経験されることもあると思うが、相手がやりたいことを制限すると、大抵の場合は反発される。相手が納得するまで説得するのはかなり骨が折れる作業だ。

私は仕事の一環で、運転をするのは危険だと判断した場合には禁止する。突然意識障害をきたす病気であれば患者さん本人や家族も比較的理解しやすい。しかし脳卒中後などで「高次脳機能障害」がある場合は、とても理解しにくい。高次脳機能障害とは記憶障害や注意障害(全体的に集中力がなくなる全般性、片側の存在を無視してしまう半側空間無視など)や構成障害(立体的なイメージが困難になる)などは、本人には病識が無いことも多く、家族も想像しにくい。

自動車運転は高度な技術と能力の集合体である。周りの景色を見て空間的な距離を推測して操作する。人や車の動向を把握して予測して判断する。もちろん交通ルールや操作方法や道順を記憶する必要もある。どれが欠けても運転できないし、一つでも間違いがあって事故を起こせば、他者を巻き込む危険性もある。

しかし佐賀は車社会だ。運転ができなくなると生活が立ち行かなくなる人が多いため、禁止に対する反発はかなり大きい。

AI(人工知能)が目覚ましい進化を遂げ、AIの方が人間よりも正確で優れている分野もあるそうだ。将来的に医師は不要になるなど心中穏やかではない説も聞くが、ここはAIの力も借りたい所である。AIが検査結果から高次脳機能障害の程度が危険だと判断したら運転禁止にする、シミュレーション動画を作成して患者さんや家族への説明に役立てるなど、いくらでも可能性がありそうだ。AIに張り合うのではなく、AIと共存してうまい解決策が見出せないだろうか。私の新年にかける夢である。

2023年12月30日の佐賀新聞より

タイトルには「高齢者の自動車運転」と書きましたが、私が今年経験した自動車運転禁止での苦戦例は比較的若い人が多かったです。けっこう高齢者は、既に周りから止められていたりして、自分でも「そろそろかな」と考えている人は少なくありません。ただ50〜60代での若い方の突然発症例などは…かなり大変です。ご家族の中でも、その方が運転しないと他に運転できない…という状況もあったりすると、私の判断がたくさんの人に影響することになり、責任は重大です。禁止すると、怒られたり泣かれたりするんですけれど、だからと言って自分の判断がブレてはいけません。

AIに力を借りたいというのは妄想というか希望です。本当に「誰か代わってください!!」という気分になるのです…

AIが代わってくれたら良いなとも思うし、AIによって安全な自動運転システムが確立すれば、運転手に要求されるスキルがもっと簡単になって運転できる人が増えるかもしれません。AIって私よりも優秀な分野、すでに色々あるしね♪

音声入力とかも助かっている♪

そんな妄想話と仕事上の愚痴を年の瀬に投稿してみました。

それではみなさま、よいお年を!!

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